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昨日の続き。好きな小説の一節を 
◆――続き。

 ジャックは、高慢(こうまん)な乱暴者だった。幼(おさな)い頃(ころ)から腕力(わんりょく)で彼にかなう者はなく、要領(ようりょう)の悪さゆえ歩むことになってしまった裏街道においても、彼は無敵だった。チェーンソーを獲物(えもの)に選んだのは単に脅(おど)しが利(き)くと思っただけだったが、この無骨(ぶこつ)で危険な機械は、大いに彼を満足させていた。
 しかし土砂降(どしゃぶ)りの雨の日のあの日、彼の価値観(かちかん)は一変(いっぺん)する。吹けば飛ぶような小柄(こがら)な老女が、烈火(れっか)のごとき気合(きあい)とともに放った不可視(ふかし)の『気(き)』は、ほんの数秒で彼を戦闘不能(ふのう)にした。その異様な力に彼は大いに恐怖(きょうふ)し、そして憧(あこが)れた。とどめを刺さんと歩み寄る气和。
 しかし、路地(ろじ)の奥から現われた少女を見た途端(とたん)、彼女の動きが止まった。好機と見て、ジャックは動かないはずの身体(からだ)を無理矢理動かし、少女を捕らえた。必殺の『気』を受けてなお自分を出し抜くほどの動きを見せたジャックに対し、气和は驚愕(きょうがく)する。
 後に彼女の孫娘だとわかった少女の首を押さえ、ジャックは气和に脅(おど)しをかけようとした……無邪気(むじゃき)に笑って彼を見る少女の首をひねることが、彼にはできなかった。
 それから半月後、中国の奥地、秘境とも言える場所で気功(きこう)の修行を積むジャックの姿があった。殺し屋として生きた数年間で、彼の手元には气和の娘夫婦が作った借金を帳消しにするほどの金が入っていたのである。气和はチャイニーズ・マフィアとの関わりを断ち、ジャックは死んだものとして彼の雇(やと)い主(ぬし)に報告された。
 無数の蝋燭(ろうそく)が幻想的(げんそうてき)に照らし出す部屋での、口伝(くでん)の伝承(でんしょう)。ほんの数年間で彼は、气和から免許皆伝(めんきょかいでん)を言い渡されるまでに成長したのである。師と、師の孫娘との、穏(おだ)やかな生活。殺伐(さつばつ)とした人生を歩んできたジャックのお、最も幸せだった日々。气和の古い友人が営んでいたフランスの牧場の、強い風が吹き渡る草原を、彼を先導するように駆(か)ける少女の無邪気な笑顔を、決して忘れないと彼は誓った。
 だが、平穏(へいおん)も幸福も、長続きはしない。
 再び激しい抗争に直面したロンドンのチャイニーズ・マフィアが、以前と同じ様に气和の力を欲しがったのである。もはや血生臭(ちなまぐさ)い世界に関わる理由のない彼女に、マフィアは少女を人質(ひとじち)として捕らえた。
 尊敬(そんけい)する師の苦境(くきょう)を救うため、そして愛する少女を野獣の住処(すみか)から助け出すため、ジャックは難攻不落(なんこうふらく)と言われたマフィアの本拠地(ほんきょち)に単身乗り込む。習い覚えた気功術(きこうじゅつ)を活用して無事潜入(せんにゅう)うぃ果たした彼が見たものは、可憐(かれん)に成長した少女の身体(からだ)を弄(もてあそ)ぶ、薄汚(うすぎたな)い男どもだった。
 気がつけば彼は、その場にいた男たち全員、素手で八(や)つ裂(ざ)きにしていた。開け放たれた古い窓から差し込む夕日が、返り血を浴びた彼と少女を赤く染めていた。
 憔悴(しょうすい)しきった少女を抱(かか)えての脱出行(だっしゅつこう)は困難を極めたが、ジャックは無事にやり遂げて見せた。气和(チーホオ)を拘束するものもなくなった。少女の心の傷を癒(いや)す事はできないかもしれないが、生きていれさえすればなんとかなると彼は信じていた。生きてさえ、いれば。
 チャイニーズ・マフィアは气和のことを諦(あきら)めたが、皮肉(ひにく)なことに、結果として彼らを出し抜くことになったジャックにシシリアン・マフィアの手が伸びたのである。彼一人が气和と少女から離れても、二人は彼に対する人質(ひとじち)として狙(ねら)われる。ともに逃げるしかなかった。
 執拗(しつよう)に迫るマフィアの追(お)っ手(て)は、仮住(かりず)まいの樵(きこり)小屋にもやって来た。そいつらの腕前は、それまでの追っ手とは桁外(けたはず)れだった。ほんのわずかな油断(ゆだん)から、气和が銃弾(じゅうだん)に倒れる。彼女をかばう少女にも、銃口(じゅうこう)が向けられた。咄嗟(とっさ)に伸ばしたジャックの手に触れたのは、樵仕事に使っていたチェーンソー。
 もはや乏(とぼ)しくなった『気(き)』を牽制(けんせい)に使わなければ、相手の反撃は受けたかもしれないが、彼は体勢を崩すことはなかっただろう。最後の追っ手を引き裂いたチェーンソーは、まるで叩(たた)き斬(き)ったのがゼリーかなにかであったように、滑(なめ)らかに振り抜かれた。
 少女の喉(ノド)を、切り裂いて。
 泣き叫びながら自分を抱きしめる巨漢(きょかん)の腕の中で、可憐(かれん)な顔を己お鮮血で染めながら、それでも少女は微笑(ほほ)んだ。愛した男が自分を思い出すとき、それは笑顔であるように。
 そしてジャックは狂(くる)った。
 マフィアの関係者は、狂気(きょうき)の殺人鬼、“ジャック・ザ・チェーンソー”を恐れた。彼のチェーンソーはマフィアのボスと幹部数人を引き裂いた後、それぞれの家族や愛人、近隣者に向かい、最後には見境(みさかい)がなくなっていた。怪我(けが)の療養(りょうよう)を終えた气和がイギリスに戻って来たときには、もはや、その悪名(あくみょう)は恐怖(きょうふ)とともに全米中に轟(とどろ)き渡っていた。

――五領闘士オーキ伝③兵魔戦士再襲!より。「2.霧都」
 
 これは、彼。ジャク・マロークの物語。彼が見て、そして、感じた物語。
 ここに登場する人物たちが本来ならば個々に持っているはずのそれぞれの物語、それを知らない僕が何を言えばいいのかは、分からない。
 
 ただ気になることはいくつかある。
 少女が愛した男というのは果たして誰であったのか?
 气和が戦う以外に生きる術を持たなかった理由は?と…。

 彼、ジャック・マローク。あるいは新たな名、黄亀・阿縁。
 彼の幸せな日々が来るのはそう、遠くない。


 まっ。これは“お話”――なんだけどね♪
では――またノシ

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【2005/11/20 09:39】 | 書き徒然 | トラックバック(0) | コメント(0)
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